個展「本の時間」展示作品

個展「本の時間」にて展示いたしました作品を
ご紹介します。

空中ブランコ/奥田英朗
2004年/文藝春秋
第131回直木賞受賞作
他シリーズ/「インザ・プール」「町長戦争」
ドラマ化、舞台化、アニメ化

伊良部総合病院地下の神経科には、
今日も悩める様々な患者が訪れます。

色白で太っちょの医者、伊良部 一郎。
『いらっしゃ〜い』という神経科に似合わない甲高い声で今日も患者を迎えます。
また、患者にビタミン注射を打つ様子を嬉々としてみる変わった医者です。

伊良部のわがままで常識外れな言動や行動に、
どの患者も振り回されながらも、最後は無事解決する。
お話も読み終えた時には清々しい気持ちになります。

空中ブランコは、空中ブランコ、ハリネズミ、
養父のヅラ、ホットコーナー、女流作家の
5つの短編が一冊となっています。

絵は、空中ブランコのお話から描きました。
ある日、空中ブランコに乗っても失敗するようになった
サーカス団員、山下公平。

公平のサーカスにやってきたカバのような体型の伊良部が、ヒョウ柄のレオタードを着て空中ブランコをする
シーンを描きました。

空中ブランコを読んだことのある人がご覧になった時、

「なんかわかる!」

とおっしゃっていただき、嬉しくて心の中でガッツポーズした私なのでした…。

個展「本の時間」展示作品

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夜のピクニック/恩田陸
2004年/新潮社
第2回本屋大賞
第26回吉川英治文学新人賞受賞作
2006年映画化

毎年、北高校では「歩行祭」という
全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという伝統行事が
ありました。

物語は高校3年生の西脇融(とおる)と甲田貴子を中心にクラスメイトとの会話や思い、友情が描かれています。

融と貴子は実は異母兄弟なのですが、
特に融は貴子を嫌悪しており、その思いを知る貴子は
ある決意をして歩行祭に参加していたのでした…。

18歳。子供のようで、すでに大人の年齢です。
友と一緒に苦しいなか一晩かけてゴールを目指す。
青春時代にしか過ごせない純粋な気持ちがたくさん
書かれています。

私自身もこの頃に出会った友人とは、
その優しさに何度も助けられて、生涯大切にしたいと
思う人たちがいます。

列を作って歩く動物といえば、ペンギン。
前を向いたり、上を向いたり、後ろを振り返ったり。
どんな事を思いながら歩いているのでしょうか…。

先頭と最後のペンギンの前後には足跡が。
絵には3羽しか描いていませんが、ちゃんと列を作った
ピクニックなんです。

個展「本の時間」展示作品

個展「本の時間」にて展示いたしました作品を
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魔女の宅急便/角野栄子
1985年〜2009年(全6巻)/福音館
特別編(全2巻)

第1巻刊行から24年を経て、ついに完結した全6冊
シリーズのある小説。
少女だったキキはお母さんになっています。

1989年・アニメーション映画はスタジオジブリが、
2014年・実写映画があります。

第1巻にも、映画にもある、キキが満月の夜に旅立つ
シーンを描きました。

ジジ(猫)より少し大きい動物…と思い小熊を描きました。リボンと靴はほんの少しのおしゃれです。

昨年7月に鎌倉へ行った際、鎌倉文学館に
角野栄子さんの原稿やお話の構想が展示されていて、
こんな風に”魔女の宅急便”は生まれたんだなぁと感動した記憶と、

この絵を描きながら、スタジオジブリの映画を観て、
キキや他の人物のセリフに感動しながら描きました。

どちらも人生の道しるべのような、素敵なお話です。

搬入の際、壁に絵をかけた時、ふわっとキキが飛んでいるようで、わぁ、とても良いなと思ったのでした。

個展「本の時間」展示作品

個展「本の時間」にて展示いたしました作品を
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白いしるし/西加奈子
2010年/新潮社

32歳独身の画家、夏目(女性)
ある日、友人の瀬田に連れて行ってもらったギャラリーで間島の絵を見た瞬間、心は波立ち持っていかれてしまう…。

夏目、間島、瀬田、それぞれの恋が書かれています。
本の裏表紙には、ひりつく記憶が身体を貫く、
超全身恋愛小説。
とあるように、”血”、”縁”という重いテーマを勢いよく
書いた小説です。

瀬田の手から、盲目の白猫がするりと抜け出した。
あまりにも真っ白で、美しいから、瀬田から魂が抜け出したみたいだった。
(小説の一部より)

絵の猫は、本の最後の方に登場する、
白い盲目の猫です。

久しぶりに本を読み返した時に、この話って映画で観たのでなくて、小説だったんだ…と思いだしたほど、映像的な印象が残るお話です。

今回唯一、何かを動物に例えるのではなくて、
小説の一部にある動物を描きました。

作者の、生と死を意識したメッセージが感じられると
思ったからです。

死んだように生きるのではなく、生ききる。
どこか救いがあって欲しいな…
と思ったので、ほんの少し笑った白い猫を描きました。

白いモンシロチョウは私のオリジナルです。

個展「本の時間」展示作品

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恋文/連城三紀彦
1984年/新潮社
第91回直木賞受賞作

「恋文」「紅き唇」「十三年目の子守唄」
「ピエロ」「私の叔父さん」
5つの短編からなる一冊です。

夫婦、恋人、元恋人、義理の母、叔父、姪
様々な家族の、人の、愛を書いた一冊です。
何度読んでもいい本だなぁと感動します。

特に好きなお話は、恋文。

「俺、悪いことするかもしれないから、先に謝っておく」ある日、美術教師の夫から職場にかかってきた電話。
夫は窓にマニュキュアで描いた桜の花びらを残して、
明け方家を出て行った…。

教師を辞め、元恋人のもとに行き様々な無茶をする夫、
将一。

命が燃え尽きようとしている夫の元恋人、江津子。

父と母に何かあったと悟り、思いを手紙にして母の職場の出版社に人生相談の手紙を出す息子、優。

そして、全てを受け止めて前へ前へ進む妻、響子。

どの人物も誰かを思う強い愛が書かれています。
それは全て形を変えた恋文。

作中には、”ラブレター”とあり、恋文とは書いていないのにタイトルが恋文ということ、知りたいな。知らないままでも何か感じられたらいいのかな。

本の最後に書かれた”あとがき”は、書き手の連城三紀彦しか知らない作話秘話も書かれています。

恋文は、45ページと短いお話ですが、2003年にドラマ化しています。脚本も役者も素晴らしいドラマでした。

手元にある文庫本は、友人がプレゼントしてくれた本です。
はじめに読んだのは大学の図書館で、本を持っていなかったから、とてもとても嬉しかった。

白くまのまわりにある、桜の花びら。
斜めにかけたカバン、
くちびるのキーホルダー、
ピエロのぬいぐるみ、カメラ。

5つの話のキーワードを絵におさめました。

だから白くまのまわりは、雪でなく桜の花びらなのです。