個展「本の時間」にて展示いたしました作品を
ご紹介します。
強運の持ち主/瀬尾まいこ
2006年/文藝春秋
ショッピングセンターの片隅で、
今日も悩める人々を占っている、占い師ルイーズ。
父と母、どちらを選ぶべき?という小学生や、
何度占いが外れても訪れる女子高生、
物事のおしまいが見えるという青年など、
ルイーズのもとに次々とあらわれるお客様たち。
いくら正しいことでも、先のことを教えられるのは幸せじゃないよ。
占いにしたって、事実を伝えるのがすべてじゃない。
その人がさ、よりよくなれるように、踏みとどまって
いる足を進められるように、ちょっと背中を押すだけ。
(小説の一部より)
2001年、「卵の緒」でデビューした瀬尾まいこは、
「幸福な食卓」「図書館の神様」「天国はまだ遠く」
など、どの作品も作者の優しい世界が詰まった小説
ばかりです。
2019年には、「そして、バトンは渡された」が
第16回本屋大賞を受賞しています。
大好きで、何度も本を読み返している作家のひとりです。生きていれば、ほんの少し過去に残した宿題みたいなものがあります。
だけど人間って、少しずつ少しずつ前を向いていくことができます。
またどの小説も食事のシーンをとても美味しそうに書いてあることも魅力的です。
そのなかでも、日常のささやかな幸せ、
誰かを思う気持ち、思いやりや愛情を書いた
強運の持ち主を選びました。
幸せがぎゅっと詰まった絵にしたくて、
柔らかい色合いになるように描きました。
こちらを見ている3頭のひつじ。
真ん中のひつじには、幸運の象徴の白い鳩と四つ葉の
クローバー。
こちらを見ている3頭とも、身近にある幸運に気づいてはいません。
だけれど、あなたが生きていることが
あなたの、そして誰かの幸せなのです。
