個展「本の時間」展示作品

個展「本の時間」にて展示いたしました作品を
ご紹介します。
今回の個展で1番最初に描いた絵です。

DMに使用した絵です。
ホリデイ書店のカフェができるカウンターで本を読む
黒い猫と白い猫です。

唯一小説を題材にした絵ではなくて、今回のテーマ
「本の時間」のプロローグとして描きました。

長い文書になりましたが、個展本の時間解説に
お付き合いいただきありがとうございました。

ほぼ、小説の話になりましたが、そのくらい本が大好きです。

最後に、私が好きな言葉をご紹介します。
NHKの番組に出演された、
イラストレーター安西水丸さんが話された言葉です。
本の世界も、絵の世界も、自由に空想の世界へ飛んでいけることは、おんなじだなと思います。

—絵を描くことについて—

こんな人がいたらどうだろうなと思えばそれがすぐ描ける。楽しい遊びですね。

個展「本の時間」展示作品

個展「本の時間」にて展示いたしました作品を
ご紹介します。
今回の個展で1番最後に描いた絵です。

キッチン/吉本ばなな
1988年/福武書店
1991年/角川文庫
2002年/新潮文庫
2013年/幻冬舎(電子版)
1989年、1997年/映画化

キッチン、満月キッチン2、ムーンライト・シャドウの3つ話が一冊となった短編集。

吉本ばななには数多くの名作がありますが、キッチンを読まれている方は多いのではないでしょうか。

最後に収録されている話、ムーンライト・シャドウは、
吉本ばななの大学の卒業制作です。

【キッチン】
早くに両親を亡くし祖母と暮らしていた、みかげ。
その祖母も亡くなり、天涯孤独となった時、
生前祖母が慕っていた花屋で働く田辺君と出会い、田辺君と田辺君の母、えり子さんと同居する。
日常の中で、少しずつみかげは前を向いていく…。

【満月キッチン2】
ある日突然おとずれた大切な人の死。
みかげと田辺君の関係も変化していきます。
夢と希望。死と絶望。恋と愛。
キッチンが絶望からの再生で前を向いていける話ならば、満月キッチン2は少し重たい現実的な話が書かれています。

キッチンは、生と死、希望と絶望をテーマに書かれています。
そして眠ること、食べることは人間にとって必要で元気にしてくれる大切なことだと感じられます。

節目節目には思いがけず絶望する場面に出くわしますが、生きていくなかで出会う様々なことの中に、ひとつひとつ幸せを見つけていくのではないでしょうか。

小説の冒頭に孤独なみかげが、夜、星空が見える窓辺の台所で眠るシーンがあり、キッチンの戸棚にある星くずの瓶の中で眠る、ルリビタキを描いて表現しました。

孤独=蓋をした瓶
青い鳥=幸せ

必ず誰かがあなたを見つけてくれて、瓶の中から飛び立てるという意味も込めています。

話は変わりますが先日、職場のカフェに来店されたお母さんとその娘さん。
娘さんの髪が顔にかかった際、さっと耳にかけてあげたお母さん。

何気ない仕草でしたが、お母さんが娘さんを大切にされているという愛情をとても自然に感じられていいなと思いました。

孤独を感じたり、絶望を感じたり、生きていくことは苦しみも多いけれど、
けっしてひとりではないということ、
誰かがあなたをみてくれて、大切にしていることを忘れてはいけないなと気付かせてくれる小説です。

個展「本の時間」展示作品

個展「本の時間」にて展示いたしました作品を
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強運の持ち主/瀬尾まいこ
2006年/文藝春秋

ショッピングセンターの片隅で、
今日も悩める人々を占っている、占い師ルイーズ。

父と母、どちらを選ぶべき?という小学生や、
何度占いが外れても訪れる女子高生、
物事のおしまいが見えるという青年など、
ルイーズのもとに次々とあらわれるお客様たち。

いくら正しいことでも、先のことを教えられるのは幸せじゃないよ。
占いにしたって、事実を伝えるのがすべてじゃない。
その人がさ、よりよくなれるように、踏みとどまって
いる足を進められるように、ちょっと背中を押すだけ。
(小説の一部より)

2001年、「卵の緒」でデビューした瀬尾まいこは、
「幸福な食卓」「図書館の神様」「天国はまだ遠く」
など、どの作品も作者の優しい世界が詰まった小説
ばかりです。
2019年には、「そして、バトンは渡された」が
第16回本屋大賞を受賞しています。

大好きで、何度も本を読み返している作家のひとりです。生きていれば、ほんの少し過去に残した宿題みたいなものがあります。
だけど人間って、少しずつ少しずつ前を向いていくことができます。
またどの小説も食事のシーンをとても美味しそうに書いてあることも魅力的です。

そのなかでも、日常のささやかな幸せ、
誰かを思う気持ち、思いやりや愛情を書いた
強運の持ち主を選びました。

幸せがぎゅっと詰まった絵にしたくて、
柔らかい色合いになるように描きました。

こちらを見ている3頭のひつじ。
真ん中のひつじには、幸運の象徴の白い鳩と四つ葉の
クローバー。
こちらを見ている3頭とも、身近にある幸運に気づいてはいません。

だけれど、あなたが生きていることが
あなたの、そして誰かの幸せなのです。

個展「本の時間」展示作品

個展「本の時間」にて展示いたしました作品を
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働く女/群ようこ
1999年/集英社

お客に対し誠実であるが、それゆえに売り上げの伸びない百貨店外商部のチハル。

夫に先立たれ、とりあえず見つけたコンビニで子供を
連れてパートとして働くミサコ。

体調を崩し、仕事を辞め、祖父の本屋で店番をすることとなったクルミ。

手抜きのできない性格で一生懸命に働くが損をして
しまうエステティシャン、タマエ…。

他にもワガママ大女優からラブホテルの女店主まで、
様々な職業の働く10人の女の日々を、心の内側をさらりと書いた短編集です。

群ようこは小説も数多く出版されていますが、
「無印良女」などのエッセイもたくさん出版されています。
また、かもめ食堂など映画化された書籍もあります。

絵の中にいる動物は、

▶︎外商員の女、チハル(ねずみ)

▶︎コンビニパート店員の女、ミサコ(いぬ)

▶︎エステティシャン、タマエ(ねこ)

▶︎祖父の本屋で働く女、クルミ(うさぎ)

働く女に出てくる主人公です。

何人か気付いてくださいましたが、本屋のひさしは、
ホリデイ書店がモデルです。

20代半ばにはよく「働く」をテーマにした本を読んでいました。
百貨店で働くことは、自分の天職と思っていたけれど、次第に何かやりたいことがあるはず…という気持ちが湧いてきました。

そう思った瞬間から、いろんな人に会いに行き調べ、
行動をし、イラストレーターへの道を目指したのでした。

働く女には、1日のなかにいろんな出来事があり、
泣いたり笑ったり、みんな一生懸命に働いて生きているのです。

個展「本の時間」展示作品

個展「本の時間」にて展示いたしました作品を
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青豆とうふ/和田誠・安西水丸
2011年/新潮社

和田誠、安西水丸。
ふたりのイラストレーターが、交互に絵と文を描いた
エッセイ集です。

時代を飛び越え、世界を回り、映画に音楽、
旅行にファッションと、まったく予想のつかない展開
は、まるでふたりが楽しそうに語っているラジオを
聴いているよう。

本の中には、イラストレーションがたくさんあります。

安西水丸といえば、テーブルの上の静物。
今回は、テーブルにビール、おつまみの落花生、
そして青豆とうふを描き、テーブルに黒いアウトラインを入れました。

和田誠といえば、キャラクターのような可愛らしい
動物。そして魅力的な色彩。
絵に紫がかったブルーを多く使われているので、
ビールのポスターに使いました。

2人の画集と睨めっこしながら描きあげた1枚です。

青豆とうふといえば、居酒屋かなと思ったこと。
サラリーマンのコアラが居酒屋にいると絵として楽しいなと思い描きました。
コアラとサラリーマンを調べた資料もたくさん見たかな。

私はこの「青豆とうふ」という本を上京するたびに
持って行き、新幹線のなかで読んでいました。

もうお二人はいなくて、新しいイラストレーションを
見ることは叶いません。
ただ、イラストレーションはこの先もずっと残り、
多くのひとたちにずっとずっと愛されるのです。